· 

2024年11月11日【大石あきこ・質問主意書】重度障害者等の就労支援に関して

こんにちは、大石あきこです。

 

前の臨時国会で提出した質問主意書が解散のため、回答がされなかったものを11月11日に再度出しました

こちらは前国会で提出した質問主意書です。

第214回国会 重度障害者等の就労支援に関する質問主意書 (shugiin.go.jp)

 

2024年11月22日、内閣の答弁書が送付されました。
第215回国会 衆議院議員大石あきこ君提出重度障害者等の就労支援に関する質問に対する答弁書

質問と答弁が別ページになっていて読みにくいので、
以下、わかりやすくするために、冒頭に「まとめ」を入れ、質問答弁を1対1に並べました。

 

【まとめ】

大阪の障害者団体の方から、障害者の就労支援の問題点を教えていただく機会があり、今回、質問として準備してきました。
2019年の参議院選挙で、れいわ新選組の木村さん、舩後さんが当選したこともきっかけに動き出したことでもあり、主体的に前に進めたい問題です。

・質問の一、二は、2020年から始った就労支援の枠組みが、ハードルが高く利用が広がってないことについて、この検証と改善策を質問しました。答弁では、「手続きの煩雑さ」という狭い問題にされていますし、社会保障審議会で求められた検証が、審議会で行われていないというのも問題です。

・質問の三は、もう一つ柔軟に利用できる枠組みとして、市町村事業の「移動支援」の「在り方の検討」の状況を質問しました。移動支援を通勤に利用できる市町村もありますが、国の財源保障もないため、国としての制度化を求められています。答弁は、「市町村に適切にやるよう周知した」というものですが、これも、国の審議会で求められている「在り方の検討」をしていないということであり問題です。

・問題の根本は、そもそもの国の制度である重度訪問介護サービスから、通勤など就労支援が対象外とされていることです(告示第523号)。このことについて、質問の四、五、六で、国連委員会の勧告を受けて、告示第523号の見直しがいるのではないかと質問しました。これについては、政府も「同意見である」ということでした!

 今後、取り組むということですので、大いに期待です。

重度障害者等の就労支援に関する質問主意書

【以下、原文をもとに質問回答を並べて見やすくしたもの】

(大石あきこ質問主意書)

 重度障害者の通勤や職場等における介助の問題は、長年の懸案とされてきました。その理由のひとつは、障害福祉サービスでは、厚生労働省告示第523号(以下「当該告示」といいます。)により、通勤、営業活動等の経済活動に対する支援が対象外とされてきたためです。2019年7月の参議院選挙で介助が必要な「れいわ新選組」の木村英子議員及び舩後靖彦議員が当選し、重度訪問介護サービスに係る要請をしたことなどを受けて、厚生労働省内の「障害者雇用・福祉連携強化プロジェクトチーム」において議論が重ねられ、2020年10月から、①雇用施策である「障害者雇用納付金制度に基づく助成金の拡充」、②福祉施策である「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」の二つの制度枠組みが作られることとなりました。

 しかし、この二つの制度枠組みは、当初から様々なハードルが指摘されてきました。

①の場合は企業が協力しないと成り立ちません。

②の福祉施策の特別事業も国の「自立支援給付(個別給付)」ではなく市町村事業であるため、市町村が予算化しないと実施できないなど、市町村の裁量に任されてしまっています。また、重度訪問介護と比べても、加算措置もなくて報酬が低いため、サービス提供事業所の確保も困難という指摘もあります。

 実際、制度開始から四年が経過しましたが、2023年度でも、②の利用人数は全国で183人、実施自治体(予定を含む)も78に留まっています。

 以下、質問します。

 

一 「障害者総合支援法改正法施行後三年の見直しについて~社会保障審議会 障害者部会 報告書~」(令和4年6月13日/厚生労働省)(以下「報告書」といいます。)では、「「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」については、(中略)使いづらさや実施する自治体の少なさが課題となっている。重度障害者等の就労の促進を図るため、職場や通勤等における支援を必要とする方の利用がさらに拡がるよう、事業の利用が進まない背景の検証や利用事例に関する情報収集などを含めて、その実施状況を踏まえながら、特別事業の周知や必要な運用改善を行うことにより、重度障害者等に対する職場や通勤等における支援を推進していく必要がある。」とありますが、「事業の利用が進まない背景の検証」はされましたか。具体的な事実があれば、いつ、どの審議会等で検証がされて、どのような検証結果であったのかを教えてください

 

(答弁)一について

 お尋ねについては、令和五年度障害者総合福祉推進事業「重度障害者の就労中の支援の推進方策の検討に関する調査研究」(以下「令和五年度調査研究」という。)において、御指摘の「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」(以下「特別事業」という。)の利用が進まない背景について調査したところであり、令和6年3月に公表された「令和五年度障害者総合福祉推進事業重度障害者の就労中の支援の推進方策の検討に関する調査研究事業報告書」において、特別事業の利用申請の手続の煩雑さ等が課題として挙げられている

 

二 同じく「必要な運用改善」はされましたか。具体的な事実があれば、いつ、どのような改善がされたのかを教えてください。

 

(答弁)二について

 お尋ねについては、例えば、特別事業の利用申請の際に民間企業等が作成する支援計画書を添付するところ、「「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業の実施について」の一部改正について」(令和5年3月23日付け障発〇三二三第一号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)において、「計画相談支援事業所が支援計画書の作成支援(助言・援助等)を行った際は、当該支援に係る費用を本事業から支出することも差し支えない」ことを示し、当該利用申請を支援する取組の推進を図ったところである。

 

三 前述の二つの制度枠組み(①②)とは別に、市町村の「地域生活支援事業」の「移動支援」事業において、市町村によっては短期的な通勤・就労支援での利用を可能としているところもあります。報告書では、「地域生活支援事業のうち(中略)障害者等個人に対する支援が含まれる事業と障害福祉サービスの個別給付との利用対象者像の関係等の実態把握や整理を行い、障害福祉サービスの報酬改定等の議論の中で、財源を確保しつつ、その在り方を検討する必要がある。」とあります。その後、移動支援事業における通勤・就労支援について、どのような実態把握と整理、在り方の検討が行われましたか。具体的な事実があれば、いつ、どの審議会等で検証がされて、どのような結果であったのかを教えてください

 

(答弁三について

 お尋ねについては、令和四年度障害者総合福祉推進事業「地域生活支援事業における日中一時支援等の利用状況等に関する調査研究」において、御指摘の「移動支援事業」の実施状況についても調査したところであり、通勤での利用については、一部の自治体で認めており、特に「家族や支援者が対応不能な場合等の緊急時の通勤/通学」のための利用を認めている自治体の割合が比較的高くなっているなど、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な形態で実施されていると承知しているところ、令和五年度障害保健福祉関係主管課長会議においても、「移動支援事業」の実施に当たっては、「事業の利用を希望する者の心身の状況や、利用についての意向等を十分に把握した上で、適切な利用時間を設定するなど、真に必要とする者にサービスが適切に提供されるよう」周知したところである。

 

四 国際連合・障害者の権利に関する委員会「日本の第一回政府報告に関する総括所見」(2022年9月2日採択)では、障害者の権利に関する条約締約国(以下「締約国」といいます。)に対し、「44(a) 全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を排除すること。」と勧告されています。これは、障害福祉サービスでの通勤、営業活動等の経済活動に対する支援を対象外とする規定(当該告示)の見直し又は、市町村の地域生活支援事業において通勤・就労支援を全国で実施できるようにすることを求めていると考えますが、政府の見解はいかがでしょうか

 

(答弁四について

 お尋ねについては、基本的には、政府としても同様に考えている

 

五 同総括所見では、締約国に対し、「58(d) 職場でより多くの支援を必要とする者に対する個別の支援の利用を制限する法規定を取り除くこと。」と勧告されています。これは、障害福祉サービスでの通勤、営業活動等の経済活動に対する支援を対象外とする規定(当該告示)の見直しを求めていると考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。

 

(答弁)五について

 お尋ねについては、基本的には、政府としても同様に考えている 

 

六 四、五の勧告を受けて、当該告示の見直しの検討は行いましたか。具体的な事実があれば、いつ、どの審議会等で検討がされて、どのような結果であったのかを教えてください。

 右質問する。

 

(答弁)六について

 お尋ねの「当該告示の見直しの検討」は現時点では行っていないが、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和4年11月18日衆議院厚生労働委員会)の三及び「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和4年12月8日参議院厚生労働委員会)の3において、「重度障害者の職場及び通勤中における介護について、現在実施している雇用と福祉の連携による取組の実施状況や、重度障害者の働き方や介助の実態を把握した上で、連携の取組の改善及び支援の在り方について検討すること。」とされていることも踏まえ、令和五年度調査研究及び令和六年度障害者総合福祉推進事業「重度障害者等の就労・修学の支援の在り方等に関する調査研究」において、重度障害者の就労支援の在り方等について調査を実施しているところであり、当該調査の結果等を踏まえ、必要な対応を検討してまいりたい。

<以下、参考資料です>

■通勤・就労時に障害福祉サービスが利用できないとされる根拠

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十八年九月二十九日)(厚生労働省告示第五百二十三号)

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1

第2 重度訪問介護

1 重度訪問介護サービス費

イ 重度訪問介護の中で居宅における入浴、排せつ又は食事の介護等及び外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。以下この第2、第3及び第4において同じ。)時における移動中の介護を行った場合

第3 同行援護

第4 行動援護

 

■雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業実施状況(令和6年3月31日)

https://www.mhlw.go.jp/content/001073878.pdf

・実施人数183人(うち雇用90人、自営等93人)、利用者が受けている支援は、重度訪問介護114人、同行援護69人、行動援護は0人である。

・実施自治体78自治体(実施人数が最も多い大阪府でも7自治体にとどまる)

 

■障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて ~社会保障審議会 障害者部会 報告書~ 令和4年6月13日

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000950635.pdf

 

3.障害者の就労支援について

<重度障害者等に対する職場や通勤等における支援> 

○ 「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」については、令和2年度においては2市で8人、令和3年度(令和4年1月1日時点)においては 11 市区町村で27人が 利用しているが、使いづらさや実施する自治体の少なさが課題となっている。重度障害者等の就労の促進を図るため、職場や通勤等における支援を必要とする方の利用がさらに拡がるよう、事業の利用が進まない背景の検証や利用事例に関する情報収集などを含めて、その実施状況を踏まえながら、特別事業の周知や必要な運用改善を行うことにより、重度障害者等に対する職場や通勤等における支援を推進していく必要がある。

 

10.地域生活支援事業について 

(1) 現状・課題

○ こうした中、事業ニーズは増大しているものの、予算額の伸びには一定の制約があるため、自治体や当事者団体から予算の確保や障害者個人に対する事業の個別給付化を要望されている。また、総務省から、地方公共団体が地域の実情に応じ必要な事業を円滑に実施できるよう、適切な事業の在り方の見直しについて、指摘を受けている。 

 

(2) 今後の取組 

○ 地域生活支援事業について、障害福祉サービスの適切な利用の推進を図るため、当該事業に含まれる事業のうち、日中一時支援等の障害者等個人に対する支援が含まれる事業と障害福祉サービスの個別給付との利用対象者像の関係等の実態把握や整理を行い、障害福祉サービスの報酬改定等の議論の中で、財源を確保しつつ、その在り方を検討する必要がある。 

 

■2022年10月7日国連・障害者の権利に関する委員会「日本の第1回政府報告に関する総括所見」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448721.pdf

 

44.委員会は、締約国に以下を勧告する。 

(a) 全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を排除すること

 

58.委員会は、一般的意見第8号(2022年)を想起しつつ、持続可能な開発目標のターゲット8.5に沿って、以下を締約国に勧告する。 

(a) 障害者を包容する労働環境で、同一価値の労働についての同一報酬を伴う形で、作業所及び雇用に関連した福祉サービスから、民間及び公的部門における開かれた労働市場への障害者の移行の迅速化のための努力を強化すること。 

(b) 職場の建物環境が障害者に利用しやすくかつ調整されたものであることを確保し、個別の支援及び合理的配慮を尊重し適用することに関する訓練をあらゆる段階の雇用者に提供すること。 

(c) 障害者、特に知的障害者、精神障害者及び障害のある女性の、公的及び民間部門において、雇用を奨励し確保するために、積極的差別是正措置及び奨励措置を強化すること、及び適当な実施を確保するために効果的な監視の仕組みを設置すること。 

(d) 職場でより多くの支援を必要とする者に対する個別の支援の利用を制限する法規定を取り除くこと

 

ぜひ、SNSでご家族や友人にご紹介ください!

Lineで広める Facebookで広める Xで広める