こんにちは、大石あきこです。
本日、10月1日、臨時国会が始まりました。用意してきた質問主意書を3本出しました(2本目)。
第214回国会 3 重度障害者等の就労支援に関する質問主意書 (shugiin.go.jp)
質問主意書とは、国会の会期中、国政全般について、議員が文書で出せる質問です。
政府からは塩回答が多いものの、現時点での政府見解を何らか公文書として残したいときに私は利用しています。
大阪の障害者団体の方から、障害者の就労支援の問題点を教えていただく機会があり、今回、質問として準備してきました。
2019年の参議院選挙で、れいわ新選組の木村さん、舩後さんが当選したこともきっかけに動き出したことなので、前に進めたい。
ただし、10月9日に解散になると、政府からの回答は間に合わず、回答はされず放置されます(許しがたい(# ゚Д゚))。
重度障害者等の就労支援に関する質問主意書
重度障害者の通勤や職場等における介助の問題は、長年の懸案とされてきました。その理由のひとつは、障害福祉サービスでは、厚生労働省告示第五百二十三号(以下「当該告示」といいます。)により、通勤、営業活動等の経済活動に対する支援が対象外とされてきたためです。2019年7月の参議院選挙で介助が必要な「れいわ新選組」の木村英子議員及び舩後靖彦議員が当選し、重度訪問介護サービスに係る要請をしたことなどを受けて、厚生労働省内の「障害者雇用・福祉連携強化プロジェクトチーム」において議論が重ねられ、2020年10月から、①雇用施策である「障害者雇用納付金制度に基づく助成金の拡充」、②福祉施策である「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」の二つの制度枠組みが作られることとなりました。
しかし、この二つの制度枠組みは、当初から様々なハードルが指摘されてきました。
①の場合は企業が協力しないと成り立ちません。
②の福祉施策の特別事業も国の「自立支援給付(個別給付)」ではなく市町村事業であるため、市町村が予算化しないと実施できないなど、市町村の裁量に任されてしまっています。また、重度訪問介護と比べても、加算措置もなくて報酬が低いため、サービス提供事業所の確保も困難という指摘もあります。
実際、制度開始から四年が経過しましたが、2023年度でも、②の利用人数は全国で183人、実施自治体(予定を含む)も78に留まっています。
以下、質問します。
一 「障害者総合支援法改正法施行後三年の見直しについて~社会保障審議会 障害者部会 報告書~」(令和四年六月十三日/厚生労働省)(以下「報告書」といいます。)では、「「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」については、(中略)使いづらさや実施する自治体の少なさが課題となっている。重度障害者等の就労の促進を図るため、職場や通勤等における支援を必要とする方の利用がさらに拡がるよう、事業の利用が進まない背景の検証や利用事例に関する情報収集などを含めて、その実施状況を踏まえながら、特別事業の周知や必要な運用改善を行うことにより、重度障害者等に対する職場や通勤等における支援を推進していく必要がある。」とありますが、「事業の利用が進まない背景の検証」はされましたか。具体的な事実があれば、いつ、どの審議会等で検証がされて、どのような検証結果であったのかを教えてください。
二 同じく「必要な運用改善」はされましたか。具体的な事実があれば、いつ、どのような改善がされたのかを教えてください。
三 前述の二つの制度枠組み(①②)とは別に、ある市町村の「地域生活支援事業」の「移動支援」事業において、市町村によっては短期的な通勤・就労支援での利用を可能としているところもあります。報告書では、「地域生活支援事業のうち(中略)障害者等個人に対する支援が含まれる事業と障害福祉サービスの個別給付との利用対象者像の関係等の実態把握や整理を行い、障害福祉サービスの報酬改定等の議論の中で、財源を確保しつつ、その在り方を検討する必要がある。」とあります。
その後、移動支援事業における通勤・就労支援について、どのような実態把握と整理、在り方の検討が行われましたか。具体的な事実があれば、いつ、どの審議会等で検証がされて、どのような結果であったのかを教えてください。
四 国際連合・障害者の権利に関する委員会「日本の第一回政府報告に関する総括所見」(2022年9月2日採択)では、障害者の権利に関する条約締約国(以下「締約国」といいます。)に対し、「44(a) 全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を排除すること。」と勧告されています。これは、障害福祉サービスでの通勤、営業活動等の経済活動に対する支援を対象外とする規定(当該告示)の見直し又は、市町村の地域生活支援事業において通勤・就労支援を全国で実施できるようにすることを求めていると考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。
五 同総括所見では、締約国に対し、「58(d) 職場でより多くの支援を必要とする者に対する個別の支援の利用を制限する法規定を取り除くこと。」と勧告されています。これは、障害福祉サービスでの通勤、営業活動等の経済活動に対する支援を対象外とする規定(当該告示)の見直しを求めていると考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。
六 四、五の勧告を受けて、当該告示の見直しの検討は行いましたか。具体的な事実があれば、いつ、どの審議会等で検討がされて、どのような結果であったのかを教えてください。
右質問する。
<以下、参考資料です>
■通勤・就労時に障害福祉サービスが利用できないとされる根拠
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十八年九月二十九日)(厚生労働省告示第五百二十三号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1
第2 重度訪問介護
1 重度訪問介護サービス費
イ 重度訪問介護の中で居宅における入浴、排せつ又は食事の介護等及び外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。以下この第2、第3及び第4において同じ。)時における移動中の介護を行った場合
第3 同行援護
第4 行動援護
■雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業実施状況(令和6年3月31日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001073878.pdf
・実施人数183人(うち雇用90人、自営等93人)、利用者が受けている支援は、重度訪問介護114人、同行援護69人、行動援護は0人である。
・実施自治体78自治体(実施人数が最も多い大阪府でも7自治体にとどまる)
■障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて ~社会保障審議会 障害者部会 報告書~ 令和4年6月13日
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000950635.pdf
3.障害者の就労支援について
<重度障害者等に対する職場や通勤等における支援>
○ 「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」については、令和2年度においては2市で8人、令和3年度(令和4年1月1日時点)においては 11 市区町村で27人が 利用しているが、使いづらさや実施する自治体の少なさが課題となっている。重度障害者等の就労の促進を図るため、職場や通勤等における支援を必要とする方の利用がさらに拡がるよう、事業の利用が進まない背景の検証や利用事例に関する情報収集などを含めて、その実施状況を踏まえながら、特別事業の周知や必要な運用改善を行うことにより、重度障害者等に対する職場や通勤等における支援を推進していく必要がある。
10.地域生活支援事業について
(1) 現状・課題
○ こうした中、事業ニーズは増大しているものの、予算額の伸びには一定の制約があるため、自治体や当事者団体から予算の確保や障害者個人に対する事業の個別給付化を要望されている。また、総務省から、地方公共団体が地域の実情に応じ必要な事業を円滑に実施できるよう、適切な事業の在り方の見直しについて、指摘を受けている。
(2) 今後の取組
○ 地域生活支援事業について、障害福祉サービスの適切な利用の推進を図るため、当該事業に含まれる事業のうち、日中一時支援等の障害者等個人に対する支援が含まれる事業と障害福祉サービスの個別給付との利用対象者像の関係等の実態把握や整理を行い、障害福祉サービスの報酬改定等の議論の中で、財源を確保しつつ、その在り方を検討する必要がある。
■2022年10月7日国連・障害者の権利に関する委員会「日本の第1回政府報告に関する総括所見」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448721.pdf
44.委員会は、締約国に以下を勧告する。
(a) 全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を排除すること。
58.委員会は、一般的意見第8号(2022年)を想起しつつ、持続可能な開発目標のターゲット8.5に沿って、以下を締約国に勧告する。
(a) 障害者を包容する労働環境で、同一価値の労働についての同一報酬を伴う形で、作業所及び雇用に関連した福祉サービスから、民間及び公的部門における開かれた労働市場への障害者の移行の迅速化のための努力を強化すること。
(b) 職場の建物環境が障害者に利用しやすくかつ調整されたものであることを確保し、個別の支援及び合理的配慮を尊重し適用することに関する訓練をあらゆる段階の雇用者に提供すること。
(c) 障害者、特に知的障害者、精神障害者及び障害のある女性の、公的及び民間部門において、雇用を奨励し確保するために、積極的差別是正措置及び奨励措置を強化すること、及び適当な実施を確保するために効果的な監視の仕組みを設置すること。
(d) 職場でより多くの支援を必要とする者に対する個別の支援の利用を制限する法規定を取り除くこと。