(写真:8月14日、地元のケアマネさんたちに聞き取りさせてもらいました。)
れいわ新選組 大石あきこです。
今年2024年もまた、災害レベルの猛暑。
日本で続く猛暑、熱中症の死亡者はこの数年は1000人を超えています。
今やエアコンは全員に必要なナショナルミニマムとも言えるもの。
先日8月14日、地元の介護支援専門員(ケアマネ)の方々が事務所に来てくださり、エアコンがないお年寄りがたくさんいるため危険だと現場の声を聞かせていただきました。
特に、生活保護世帯でのエアコン支給が、現状ほぼ無理に近いハードルがあるを何とかできないのか。
後日、国(厚労省)に「●●●な状況でもエアコン支給はダメなのか?」という形式で、問い合わせました。
問い合わせ内容の前提として、 私としては、現行の生活保護の「実施要領」の範囲内であっても「特別な事情」(※1)であれば保護費からのエアコン支給は可能であり、その「特別な事情」の幅を広げ「ダメではない」と国は認めるべきだと考えています。
- ※1:2024(令和6)年3月 社会・援護局関係主管課長会議資料(抜粋)
- 生活保護制度では、日常生活に必要な生活用品については、保護費のやり繰りによって計画的に購入していただくこととしているが、①保護開始時に持ち合わせがない場合、②災害により喪失し、災害救助法(昭和 22 年法律第 118 号)等他制度からの措置がない場合、③犯罪等により被害を受け、生命身体の安全確保のために新たに転居する場合で持ち合わせがない場合などの特別な事情がある場合に限り、一時扶助として家具什器費の支給を認めているところである。近年、熱中症における健康被害があることを踏まえ、平成 30 年7月1日からこの家具什器費に冷房器具を加えたところである。なお、特別な事情がない生活保護世帯においては、従来どおり毎月の保護費のやり繰りの中で冷房器具等の購入費用を賄うこととなる(以下略)
【現時点の問い合わせ結果まとめと、今後の方針】
(やりとりの原文は次の「質問と回答の全文」を参照)
(1)厚労省の回答について
・厚労省は「保護開始から最初の夏じゃないとダメ」「修理は対象外」という姿勢を崩していないのが現状。
・①は「初めて到来する熱中症予防が必要となる時期」は、「初めての夏」という考え。「数年後でもいいのでは」という質問には、「想定していない」と回答を逃げているのが現状。
・②は、故障しているエアコンの買い換えなら対象になり得るとの回答なので使えます。ただし、①の初めての夏が前提になる。
・③は、修理が対象外になる根拠を聞いても「想定していない」と回答を逃げているのが現状。
・エアコンについては、結局、生活保護費でやりくりして購入せよという立場を崩さず、目の前で人間が苦しんでいることを突き放すものであり、許しがたい。
・こちらの質問事例について厚労省は「ダメだ(不可である)」とも言えない。根拠を示せないが、従来の答弁を崩すこともない。
(2)今後の方針
・引き続き、「想定していない」ではなく、自治体が判断した場合に「ダメなのか(不可なのか)」どうかの回答を求めるが、平行線になると思われる。やり取りを公開し、国民の声によって、答弁を変えさせていく必要がある。
・自治体の現場においても、国が「想定していない」としても、自治体の裁量の範囲だとして、緊急で支給を認めろと要求していく必要がある。
・国が認めないからと放置してよいことではなく、自治体の費用でエアコン設置を支援することは可能である(奈良県生駒市は、エアコン設置できていない生活困窮世帯に10万円の支援を始めた)
大石あきこ→厚労省への問い合わせ全文(2024年8月15日)
(厚労省あて)
(前提)
・災害ともいえる猛暑で熱中症の被害が起きている。
・熱中症の死亡者はこの数年は1000人を超えている
・令和5年度夏の熱中症死亡者の状況によると、
*死亡者のうち8割以上は高齢者(65歳以上)
*屋内での死亡者(148人)のうち約9割がエアコン不使用等(「エアコンを使用していない(64%)」 又は「エアコンを所有していなかった(26%)」)参考:環境省 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sg_pcm/R0503/doc01.pdf
・そんな中で、多くの高齢者や障害者が、エアコンのない家にいる(エアコンが壊れて動かない場合も含む)。心配したヘルパーやケアマネが、市役所に対応を求めても、「生活保護ではエアコン購入や修理は対象外」と言われ、困っている事例を聞く。
・エアコンはけっしてぜいたく品ではなく、生きるために最低生活維持のために必要不可欠。命がかかっている。
・本年令和6年5月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課名の事務連絡でも、「熱中症を予防するためには適切なエアコン利用が重要」とある。
上記の国の通知では、「特別な事情」がある場合以外は、保護費のやりくり又は貸付により購入・修理するよう求めている。しかし、お金がない、返済できない人が現実にいる。命を守るための運用になるように見解を求めたい。
そこで以下の点について厚労省の見解を求めます。ご回答願います。
(質問)
①:「特別な事情」のうち、「保護開始時において、最低生活に直接必要な家具什器の持ち合わせがない時」(※2)について、保護を数年前に受けてから、ずっと暑さは我慢してきたが、今年の猛暑で特に熱中症対策が必要となった場合には、さかのぼって「保護開始時に持ち合わせがなかった」と判断することはダメか。(※ダメか=厚労省としては、「都道府県等の判断で可能とすることもあり得ると考えているか」という意味で聞いています)
- ※2:第7 第7 最低生活費の認定 2 一般生活費 (6) 家具什器費
- ウ 冷房器具
- 被保護世帯がアの(ア)から(オ)までのいずれかに該当し、当該被保護世帯に属する被保護者に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって、それ以降、初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるに当たり、最低生活に直接必要な冷房器具の持ち合わせがなく、真にやむを得ないと実施機関が認めたときは、冷房器具の購入に要する費用について、67,000円の範囲内において、特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこと。(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8432&dataType=1&pageNo=1)
②:保護開始時にエアコンが壊れていた場合も、「持ち合わせがない時」と判断することはダメか(修理のめどが立たないなど、購入が必要なケース)
③:エアコンが最低生活に直接必要な家具であることから、その修理は、「住宅維持費」(※実施要領局長通知第7-4(2)ア ※3)と判断して支給することはダメか。
※「現に居住する家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理・・のための経費を要する場合」について支給可能。畳、建具、水道設備、配電設備の修理が対象となるのであれば、エアコンも「等」で読むことは可能だろう。
- ※3:実施要領局長通知第7-4(2)ア(通知:○生活保護法による保護の実施要領について)
- 第7 第7 最低生活費の認定 4 住宅費 (2) 住宅維持費
- ア 保護の基準別表第3の1の補修費等住宅維持費は、被保護者が現に居住する家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理又は現に居住する家屋の補修その他維持のための経費を要する場合に認定すること。(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8432&dataType=1&pageNo=1)
<今後の課題として>
・特別な事情がなくても、最低生活に直接必要なエアコンは、条件なしに現物給付されるべき
・熱中症対策として、生活保護にかかわらず、エアコンの現物給付をすべき
・67,000円ではエアコン購入・設置はできない。上限額を引き上げるべき
・電気料金の負担のためにエアコン利用ができないので、夏季加算を創設すべき
厚労省→大石あきこへの回答、さらなる問いと再回答の全文
質問①~③
→厚労省回答(2024年8月16日)
【再質問①③】(同8月19日)
→厚労省再回答(同8月21日)
①:「特別な事情」のうち、「保護開始時において、最低生活に直接必要な家具什器の持ち合わせがない時」について、保護を数年前に受けてから、ずっと暑さは我慢してきたが、今年の猛暑で特に熱中症対策が必要となった場合には、さかのぼって「保護開始時に持ち合わせがなかった」と判断することはダメか。
- →(回答)冷房器具の購入に要する費用について、実施要領第7の2の(6)のウにおいて、保護開始時等以降、「初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるにあたり」との要件があり、ご指摘のケースは、特別基準の設定があったものとして必要な額を認定することはできません。
- このため、保護費のやりくり又は生活福祉資金貸付により購入していただくものと考えます。
- 【再質問①】「初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるにあたり」との要件があるのはわかるのですが、その「時期」については、保護開始時以降の「初めての7月」等と時期を固定した書きぶりにはなっていません。「熱中症予防が必要となる時期」とは、暦や外気温だけではなく、被保護者の体調など個別の事情も考慮した必要性の判断が求められるのではないでしょうか。つまり、今年の猛暑で特に熱中症対策が必要となった場合であれば、それを「初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えた」と都道府県等が判断することも基準の範囲内と言えないでしょうか。
- ※再質問にあたっては、「熱中症で命を失う人がでないように、個別の事情に応じ、都道府県等の判断で対応できる範囲を確認したいと考えています。そのため、以下、①、③について再質問になりますが、教えてください。」と再質問しています。
- →(回答)冷房器具の購入に要する費用については、基本的に保護費のやり繰りにより対応することとしているため、お尋ねの「初めて到来する熱中症予防が必要となる時期」については、保護開始時以降の複数年経過後については想定してはいないところです。
②:保護開始時にエアコンが壊れていた場合も、「持ち合わせがない時」と判断することはダメか(修理のめどが立たないなど、購入が必要なケース)
- →(回答)ご指摘のケースは、福祉事務所において、冷房器具の持ち合わせがないものとして、冷房器具の購入に要する費用につき特別基準の設定があったものとして必要な額を認定することはあり得るものと考えます。
③:エアコンが最低生活に直接必要な家具であることから、その修理は、「住宅維持費」(※実施要領局長通知第7-4(2)ア)と判断して支給することはダメか。
※「現に居住する家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理・・のための経費を要する場合」について支給可能。畳、建具、水道設備、配電設備の修理が対象となるのであれば、エアコンも「等」で読むことは可能だろう。
- →(回答)「住宅維持費」については、実施要領第7の4の(2)のアのとおり、「家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理(略)のための経費を要する場合」について費用認定が可能であるところ、冷房器具については家屋の従属物に当たらないと考えています。
- 【再質問③】畳、建具、水道設備、配電設備が従属物であるのに、冷房器具が従属物にあたらないとする理由を教えてください。水道や電気と同様に、冷房は最低生活に直接必要となっており、配電設備「等」の範囲内と考えることはできると思います。都道府県等が、冷房器具についても家屋の従属物と判断した場合、厚労省がそれを不可とする根拠は何かを教えてください。
- →(回答)冷房器具の支給については、保護の実施要領上(事務処理基準)において、生活扶助の一時扶助の家具什器費として支給対象としており、住宅扶助の住宅維持費として支給することは想定しておりません。
- なお、従属物として例示している、畳、建具、水道設備、配電設備は、建物所有者に帰属することが外形上明確であり、当該建物から分離して他の建物に転用することが一般的ではないのに対し、冷房器具は、外形上、いずれの所有に帰属するか明らかではなく、また、転居において撤去された後、転居先の住居に設置されることもよくあることから、家屋の従属物とはいえないと考えております。
【関連質問】上記「従属物」の定義はいつ定まったものか、これまで一度も変更・追加されたことはないか、も教えてください
- →(回答)保護の実施要領上、「従属物」の具体的な定義について記載されたものはありません。
<今後の課題として>
以下の点についても、要望し、見解を求めた。
・特別な事情がなくても、最低生活に直接必要なエアコンは、条件なしに現物給付されるべき
- →(回答)経常的最低生活費については、要保護者の衣食等月々の経常的な最低生活需要のすべてを満たすための費用として認定するものであり、被保護者は、経常的最低生活費の範囲内において、通常予測される生活需要はすべてまかなうべきものと考えます。
- 一方で、冷房器具については、実施要領第7の2の(6)のウのとおり、保護開始時に持合わせがない場合等は、その購入に要する費用につき特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこととしており、「条件なしに現物給付」することはできません。
・熱中症対策として、生活保護にかかわらず、エアコンの現物給付をすべき
- →生活困窮世帯においてエアコンを購入する際に必要な経費については、社会福祉協議会が実施する生活福祉資金の貸付を受けることが可能となっております。
- 生活保護世帯におけるエアコン購入費用に関する考え方は前述のとおりですが、保護費のやり繰りによって購入が困難な場合には、生活福祉資金貸付を活用して購入していただくことも可能としています。
・67,000円ではエアコン購入・設置はできない。上限額を引き上げるべき
- →冷房器具の購入に要する費用の上限については、価格動向等を勘案し、毎年度、所要の改定を検討・実施しており、令和6年度の基準額は、令和5年度の基準額から5,000円増額して67,000円としています。
- 上限額については、今後とも必要に応じて見直しを検討していきます。
- また、冷房器具の設置費用については、真にやむを得ないと認められる場合、冷房器具の購入費用とは別に、必要最小限度の額を支給できる取扱いとしています。
・電気料金の負担のためにエアコン利用ができないので、夏季加算を創設すべき
- →平成26年の社会保障審議会生活保護基準部会における冬季加算の検証の中で、各月の光熱費支出額を確認したところ、夏季に支出額が増加する実態は確認できませんでした。
- また、近年の各月の光熱費支出額を確認すると、これまでと同様に、夏季に支出額が増加する実態は確認できませんでした。
- 以上のような実態を踏まえ、夏季加算を創設することは考えていません。
(追記)
なお、「生活保護問題対策全国会議」も同様に「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能なはずとして、熱中症対策として「保護開始、退院・退所、転居等の場合にかかわらず、持ち合わせがない場合には設置費用を支給すべき」との要望を昨年8月10日の時点で行っています。
政府は熱中症対策を呼び掛ける一方で、政府の通知で解決しうる問題については放置し、保護費の中でのやりくりや、生活福祉資金の貸付の利用で対応するように求めており、ありえない対応です。
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