こんにちは。大石あきこです。
昨日、2021年2月17日に、いわゆる「広域一元化」条例について、現時点の案が大阪府HPで公表されました。
大阪府HP(http://www.pref.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/fushi_ittaiunei/publiccomment.html)
2月17日に条例案が公表されたばかりなのに、大阪府が条例骨子のパブリックコメント(意見募集)を早くも2月20日に打ち切り、2月25日に府と市の議会に上程すると言われています。
条例の案を読んでから意見を出すには急すぎます。市民の意見聞く気なさすぎ!
パブコメ延期は絶対必要です。
この条例案を読みましたが、やはりとんでもなく大阪市が乗っ取られる中身です。
報道では、「公明党の意見も受けて、市長の関与が明記された(から大丈夫)」みたいなニュアンスだったり、
「今回はザックリとした内容を決めるいわゆる”理念”条例で、実効性は、まだない」などの意見もあるようですが、全然そうじゃない。
内容は、1月25日に示された「骨子」(ブログ記事参照)からまったく変わってませんし、単なる理念条例ではありません。
ポイントは2つあります。
①「副首都推進本部会議」を条例化することで、大阪市は大阪府と対等ではなくなり、大阪市は従属団体になり下がる(乗っ取り)。
②この条例の「事務委託」によって、大阪市民はまちづくりの発言権を失い、お金だけ負担させられる(カツアゲ)。
だれが好き好んで、乗っ取られますか?カツアゲされますか?嫌やろ。
マスコミも真実を報道してください。
この乗っ取り&カツアゲは、地方自治法でいう「地方自治の本旨」に反するもので、脱法条例と言えます。
「地方自治の本旨」とは、「団体自治(国や府からの独立性)」「住民自治(住民の自己決定権)」だと定義されています。
この2つとも奪われるわけで、大阪市という自治体の「死」と同じです。
11月の住民投票で、多くの市民が必死になって行動し、大阪市を守ることができました。
大阪市を守ることは、大阪市が変わっていけることでもあります。
大阪市の存続が決まり、やっと政令指定都市の強みを生かして、コロナ対策や市民のためにお金を使っていける。
その矢先に、なぜまだ「乗っ取り」「カツアゲ」をやるのか。
しかも今度は、住民投票もなしに。
あの住民投票はなんだったんだ。コロナ増やして、10億円以上つぎこんで。
吉村知事、松井市長。
住民投票で「都構想は否決」されたんです。
脱法条例で住民の意思をふみにじるのはやめてください。
市民のみなさん、自分たちのコントロール権を取り戻すために、もう一度、行動しましょう。
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条例案のこまかい解説
以下、公開された「条例案」にそって、解説します。(下線は解説用に私が引っ張ったものです。)
※以下の条例案は「府条例」の案だということで、条文は「府は」から始まるものが多いです。大阪市側でも「府は」を「市は」に入れ替えた同じ趣旨の条例を作るということです。
「条例案」ー目的
大阪府及び大阪市における一体的な行政運営の推進に関する条例(案) (趣旨) 第一条 この条例は、大阪の成長及び発展を支えるため、将来にわたって府と大阪市の一体的な行政運営を推進することに関し必要な事項を定めるものとする。 (基本理念) 第二条 府は、一体的な行政運営を推進することを通じて、府及び大阪市の二重行政を解消するとともに大阪の成長及び発展を図ることにより、副首都・大阪を確立し、もって豊かな住民生活を実現するものとする。 (責務) 第三条 府は、この条例に定める事項を誠実に履行する責務を有する。
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上の第一条から、第三条までだけでも、一般的な条例と比べると異質です。
普通は、第一条に(目的)が明記され、第二条に(定義)の項目があって、条例の中の言葉の意味を明確にして、不要な混乱や権利侵害にならないようにしています。
しかし、この条例案には「定義」がありません。
大阪の成長及び発展とは何でしょうか? →第八条、第九条の具体的な権限を規定する言葉ですが、どこにも定義が出てきません。
一体的な行政運営とは具体的に何でしょうか?
二重行政を解消とは具体的に何でしょうか?
副首都・大阪とは、具体的に何でしょうか?
維新の会という政党のスローガンならわかりますが、大阪府と大阪市の条例ですよ?
定義もあいまいなのに、「誠実に履行する責務を有する」約束をすること自体でやばいです。
定義のないフワフワっとした「大阪の成長」に巻き込まれて、大阪市の財産をいくらでも持って行かれる危険性大。
続いて見ていきます。
「条例案」ー副首都推進本部会議の位置づけ
(会議の設置等) 第四条 府は大阪市と共同して、府及び大阪市の一体的な行政運営を推進することを目的として、副首都推進本部(大阪府市)会議(以下「会議」という。)を設置する。 2 会議は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二十一の二第一項に規定する指定都市都道府県調整会議とする。 3 会議においては、第八条及び第九条に規定する事項その他知事及び大阪市長が必要と認める事項について協議するものとする。
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条例案第四条で副首都推進本部(大阪府市)会議を設置するとあります。
「副首都推進本部会議」というのは、2015年から大阪府と大阪市が「要綱」により設置しており、都構想を推進してきた会議です。松井市長は、「10年間やってきたものを条例に書くだけ」と言ってますが、本当でしょうか?
続く第四条の第2項では、「副首都推進本部会議は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二十一の二第一項に規定する指定都市都道府県調整会議とする。」と書いてあります。
「指定都市都道府県調整会議」というのがすでに地方自治法で規定されているんです。この規定と比較して、「副首都推進本部会議」が矛盾していないか、検証します。
ここがヤバイ①:地方自治法の規定を大きく逸脱した条例。大阪市は大阪府と対等ではなくなり、大阪市は従属団体になり下がる(乗っ取り)
以下、地方自治法と条例案の対照表です。法律と条例案との大きな違う部分に下線をつけて、表の下に解説を付けました。
・会議の目的
地方自治法 |
「条例案」(法の条文に対応する部分) |
(指定都市都道府県調整会議) 第二百五十二条の二十一の二 指定都市及び当該指定都市を包括する都道府県(以下この条から第二百五十二条の二十一の四までにおいて「包括都道府県」という。)は、指定都市及び包括都道府県の事務の処理について必要な協議を行うため、指定都市都道府県調整会議を設ける。
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(会議の設置等) 第四条 府は大阪市と共同して、府及び大阪市の一体的な行政運営を推進することを目的として、副首都推進本部(大阪府市)会議(以下「会議」という。)を設置する。 2 会議は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二十一の二第一項に規定する指定都市都道府県調整会議とする。 3 会議においては、第八条及び第九条に規定する事項その他知事及び大阪市長が必要と認める事項について協議するものとする。 |
会議の目的がまず違います。地方自治法では必要な協議を行うためですが、条例案ではいきなり府及び大阪市の一体的な行政運営を推進することを目的としてとなっています。
何がアカンの?と思う人もいるかもしれませんが、
条例というのは、法律の範囲内で制定権があります。
したがって、副首都推進本部会議の設置目的は、地方自治法の規定の範囲内にしなければなりません。「一体的な行政運営」が目的となるのは、法の範囲を逸脱します。
・会議の構成
地方自治法 |
「条例案」(法の条文に対応する部分) |
2 指定都市都道府県調整会議は、次に掲げる者をもつて構成する。 一 指定都市の市長 二 包括都道府県の知事 |
第五条 会議は、本部長、副本部長及び本部員をもって組織する。 2 本部長は、知事をもって充て、副本部長は、大阪市長をもって充てる。 (同条)5 本部長は、会議の事務を掌理し、会議を代表する。 |
会議の構成です。
法律では市長と知事が対等に並んでいますが、条例案では「本部長は、知事」といきなり知事が上位の本部長となり本部長は、会議の事務を掌理し、会議を代表するとなってしまいます。
会議を「掌握し」「会議を代表する」本部長である知事に、事実上の決定権が与えられるとしか読めません。
この時点で、市長と知事は対等ではなく、市長が知事に従属する仕組みが始まります。
・構成員の選出(その1)
地方自治法 |
「条例案」(法の条文に対応する部分) |
3 指定都市の市長及び包括都道府県の知事は、必要と認めるときは、協議して、指定都市都道府県調整会議に、次に掲げる者を構成員として加えることができる。 一 指定都市の市長以外の指定都市の執行機関が当該執行機関の委員長(教育委員会にあつては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者 四 包括都道府県の知事以外の包括都道府県の執行機関が当該執行機関の委員長(教育委員会にあつては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者
二 指定都市の市長がその補助機関である職員のうちから選任した者 |
4 知事又は大阪市長は、必要があると認めるときは、知事及び大阪市長以外の執行機関の委員長(教育委員会にあっては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員から選任した者を本部員として加えるものとする。
(同条)3 本部員は、知事又は大阪市長がその補助機関である職員のうちから選任した者をもって充てる |
会議の構成員の選定ルールについて。
「市長以外の指定都市の執行機関」(例えば教育委員会など)からの選任方法ですが、法律と条例案では「選任する者」が異なります。
例えば教育委員会から会議のメンバーを選定するケースでは、法律では、教育委員会がメンバーを誰にするか選任しますが、条例案では「知事又は大阪市長」が選任します。
これも地方自治法から逸脱です。知事又は市長が、権限を飛び越えて好きなメンバーを指定できることは大問題すぎるので、この辺は上程までに修正してくるか?
・構成員の選出(その2)
地方自治法 |
「条例案」(法の条文に対応する部分) |
(※指定都市の市長及び包括都道府県の知事は次に掲げる者を構成員として加えることができる) 三 指定都市の議会が当該指定都市の議会の議員のうちから選挙により選出した者
五 包括都道府県の知事がその補助機関である職員のうちから選任した者 六 包括都道府県の議会が当該包括都道府県の議会の議員のうちから選挙により選出した者 七 学識経験を有する者 |
(第六条)5 本部長は、必要と認めるときは、副本部長と協議して、次に掲げる者に対し、会議への出席を求めるものとする。 一 府議会又は大阪市会の議員 二 特別顧問及び特別参与(非常勤職員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和四十年大阪府条例第三十八号)第二条第三項に規定する者であって、副首都化、府が大阪市と共同して取り組む施策その他知事が定める施策(以下この項において「特別施策」という。)に関し必要な事項又は特別施策のうち特定の分野に関し必要な事項を調査し、及び助言するものをいう。) 三 府内の市町村の長 四 学識経験を有する者その他関係者 |
つづいて、他の構成員の選出方法ですが、会議への出席を求めるのは、法律では「市長及び知事は」と対等ですが、条例案では「本部長は」(=知事)となっています。市長の権限はありません。
それから、法律にないのに、条例では様々な人を会議のメンバーにしちゃってます。つまり、大阪府が22人、大阪市で28人も委嘱している「特別顧問及び特別参与」とか、「府内の市町村の長」「その他関係者」です。
これも地方自治法からの逸脱です。
「特別顧問及び特別参与」は、府と市で違う人を委嘱しています。市が委嘱していない人を、本部長(知事)が出席させ、大阪市の重要な方針について発言するのは逸脱です。
「府内の市町村の長」が入るのは一見よさそうですが、「大阪市」の行政運営の重要な方針について、たとえば維新の八尾市長が「あーすべき、こーすべき」と言うのは逸脱でしょう。
そして「その他関係者」って誰ですか?パソナ会長とか?
・会議の運営、合意形成
地方自治法 |
「条例案」(法の条文に対応する部分) |
5 指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、第二条第六項又は第十四項の規定の趣旨を達成するため必要があると認めるときは、指定都市の市長にあつては包括都道府県の事務に関し当該包括都道府県の知事に対して、包括都道府県の知事にあつては指定都市の事務に関し当該指定都市の市長に対して、指定都市都道府県調整会議において協議を行うことを求めることができる。
6 前項の規定による求めを受けた指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、当該求めに係る協議に応じなければならない。
7 前各項に定めるもののほか、指定都市都道府県調整会議に関し必要な事項は、指定都市都道府県調整会議が定める。
(指定都市と包括都道府県の間の協議に係る勧告) 第二百五十二条の二十一の三 指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、前条第五項の規定による求めに係る協議を調えるため必要があると認めるときは、総務大臣に対し、文書で、当該指定都市及び包括都道府県の事務の処理に関し当該協議を調えるため必要な勧告を行うことを求めることができる。
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(会議の運営) 第六条 会議は、本部長が招集し、これを主宰する。 2 副本部長は、必要があると認めるときは、本部長に会議の招集を求めることができる。
3 前項の規定による招集の求めがあったときは、本部長は、会議を招集しなければならない。
4 会議においては、本部長、副本部長及び本部員は議論を尽くして合意に努めるものとする。
(進捗状況の管理) 第七条 会議で合意した事項については、会議において進捗状況の管理を行うものとする。
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会議の招集権は、法律では、市長と知事の双方対等にあります。協議を求められたら、双方が応じなければなりません。
条例案では、招集するのはあくまで知事の権限です。市長は開催を求めることはできますが、対等ではありません。
法律に定めている内容と、全然違いますよね。
法律では、市長と知事は対等なので、合意の義務はありません。対立する場合は総務大臣に勧告を求めるプロセスが用意されています。
これに対し、条例案では「合意に努めるものとする」と合意の努力義務が課せられます。そして、合意したものを進捗管理するのは会議を掌握する知事となります。
大阪府はこの会議を「決定の場」と明記したかったのですが、地方自治法の「協議の場」ということと明白に違反してしまうので、このような書きぶりにしたと説明しています。つまり、合意の努力義務を課すことで、『事実上の決定の場』とする意図が込められています。
参考(2021年1月22日副首都推進本部会議での本屋事務局長説明):「基本的に調整会議というのが連絡調整の会議やということで、なかなか決定というところまで書くというのがどうかというような議論がありました。議論を尽くして、そこで合意を得たものについて決定するとかいろいろ書きぶりを考えましたけれども、そういう書き方をしてもあまり意味がないかなという気もしまして、それなら構成員に合意に努めるというような義務を課すような形がいいんじゃないかなということで、そうさせてもらいました。」
・勧告を求める手続き
地方自治法 |
「条例案」(法の条文に対応する部分) |
2 指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、前項の規定による勧告の求め(以下この条及び次条において「勧告の求め」という。)をしようとするときは、あらかじめ、当該指定都市又は包括都道府県の議会の議決を経なければならない。 |
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地方自治法では、市長と知事が協議して合意しない場合に、必要な手続きを経て総務大臣に勧告を求めるプロセスを規定しています。
詳細は略しますが、勧告を求める前には、議会の議決が必要となります。
条例案はこのようなプロセスを経ないで、その前に「合意の努力義務」を課すことで、会議そのものを事実上の決定の場としようとしています。
★ヤバイ点①のまとめ★
以上のように、府条例は、知事が「本部長」「会議の事務を掌理し、会議を代表」(第五条)とし、「会議は、本部長が招集し、これを主宰」「合意に努める」(第六条)こととし、知事が出席者を決め(第六条)、知事が「進捗管理」(第七条)することで、大阪市をタガはめし、大阪府知事に従属させる仕組みとなっています。
地方自治法の規定する「調整会議」とは、すべてにわたって、似て非なるものなのです。
多少の修正で、この本質を変えることは不可能でしょう。
ここがヤバイ②:大阪市民はまちづくりの発言権を失い、お金だけ負担させられる(カツアゲ)
次に、以上の大阪市が大阪府に従属する仕組み(乗っ取り)の会議において、大阪市民がまちづくりの発言権を失い、お金だけが負担させられる仕組み(カツアゲ)を見ていきます。
「条例案」
(府及び大阪市が会議において協議すべき事項) 第八条 府は、次に掲げる事項について、大阪市と会議において協議するものとする。 一 今後の大阪の成長及び発展に関する取組の方向性 二 大阪の成長及び発展を支える大都市のまちづくり及び広域的な交通基盤の整備の方向性 三 情報通信技術その他の先端的な技術の活用を図る取組の方向性 2 府は、前項各号に掲げるもののほか、府が大阪市と一体的に又は連携して取り組む重要施策に関する方針等について、大阪市と会議において協議するものとする。
3 府は、必要があると認めるときは、前二項に規定する方針等に係る個別の事業の実施における府及び大阪市の役割分担又は費用の負担等について、大阪市と会議において協議するものとする。
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条例案の第七条までで見てきたように、この会議で協議すべき事項は、「合意の努力義務」が課せられ、知事による「進捗状況の管理」が行われますが、
協議すべき事項とされる大阪の成長及び発展に関する取組、府が大阪市と一体的に又は連携して取り組む重要施策に関する方針等の定義があいまいすぎますので、いくらでも知事の権限の拡大が可能となります。
情報通信技術その他の先端的な技術の活用を図る取組の方向性についても、大阪市は大阪府に従属することになります。
これは、国策であるデジタル化の実験場として大阪市のエリアを指定する目的があります(いわゆる「スーパーシティ」構想)。この内容は長くなるので、後日、別の記事とします。
(参考:大阪市HP スーパーシティの区域指定を目指しています )
「条例案」
(府及び大阪市が一体的に取り組む事務等) 第九条 府及び大阪市の一体的な行政運営に当たっては、府は大阪市と共同して、次に掲げる手法その他の手法を検討し、最適なものを選択するものとする。 一 協議会の設置(地方自治法第二百五十二条の二の二第一項に規定する協議会の設置をいう。) 二 内部組織(地方自治法第百五十八条第一項に規定する内部組織をいう。次項において同じ。)、附属機関(同法第百三十八条の四第三項に規定する附属機関をいう。)その他の機関等の共同設置(同法第二百五十二条の七第一項に規定する機関等の共同設置をいう。) 三 事務の委託(地方自治法第二百五十二条の十四第一項に規定する事務の委託をいう。附則第二項において同じ。) 四 地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。次項において同じ。)その他の法人の新設又は合併 2 府及び大阪市が共同して設置している内部組織及び地方独立行政法人並びに府又は大阪市が出資し又は出えんした法人のうち成長及び発展に関する事務を処理するもののうち前項の規定の趣旨を踏まえたものは、それぞれ別表第一、別表第二及び別表第三に掲げるとおりとする。
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別表第一、第二、第三全て、すでに共同設置をしている機関です。わざわざ条例に書き込む意図は、簡単には元に戻せないようにするためでしょうか。
「副首都推進局」「ⅠR推進局」については、今は内部の「規約」によって設置されています。これをドサクサに条例による設置にして恒久化しようというのも姑息ですね。
ここからが、具体的なカツアゲする権限です。
「条例案」
3 第一項の規定の趣旨を踏まえ、次に掲げる事務については、府は大阪市から受託して、知事が管理し及び執行するものとする。 一 大阪の成長及び発展に関する府及び大阪市の基本的な方針(広域にわたる事項に係る部分に限る。)として別表第四に掲げるものの策定に関する事務 二 都市計画(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第一項に規定する都市計画をいう。以下同じ。)の基本的な方針、広域的な観点からのまちづくり及び交通基盤の整備等に係る都市計画として別表第五に掲げるものの決定に関する事務
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大阪の成長戦略を府に委託するということですが、「何を」委託するんですか。笑
それでも役所ですか?
ここまでのものを委託するのは、「地方自治法第二百五十二条の十四第一項に規定する事務の委託」を超えています。
こんな漠然と委託してしまうなんて、考えられないことですが、これまで言われてきた「大阪の成長戦略」は、大阪の都市部のまちづくりの基本方針と位置付けられるものです。
その中に、カジノ付きのIRや、夢洲開発も含まれますし、「人材育成」の考え方も入っています。これらについて、大阪市民がカジノ反対の市長を選んでも、「大阪の成長戦略」を変えることはできなくなります。府に委託してしまっているので。まさに、それが狙いなんでしょう。
それらの重点事業については優先的に予算や人員の措置が取られますので、そうとうな従属とカツアゲになります。
(大阪市の議会で予算審議権があるからカツアゲではない、などと松井市長が言っていましたが、この条例で方針決定がなされた以上、その決定にしたがった予算措置は市の義務となるのだから、市の予算審議権は骨抜きにされます。)
しかも、別表四の第四で大阪の成長及び発展に関する府及び大阪市の基本的な方針はすべて大阪府に委託するとあるため、もはや歯止めはありません。
大阪府知事が「これは『大阪の成長及び発展に関するものだ』」と判断した政策は、すべて副首都推進本部会議で協議し、府へ委託されることになる規定です。
いったい、「大阪の成長及び発展に関しないもの」(大阪市に残るもの)って何なんでしょうね?
さらに別表五で委託される内容は、今、予算の上振れが問題になっている夢洲開発のことがスッポリ入っています。
万博建設費の上振れ600億円、アクセス道路建設費予算の上振れ700億円、アクセスする地下鉄延伸予算をカジノ業者が決まらなかったので肩代わりする202億円。
こんなものにお金出すのか?の決定権を府に握られ、お金出すのは大阪市!!絶対アカン。
基本方針は大阪府が決め、大阪市はそれを実行するだけになる。
いったん委託してしまえば、大阪市民が止めることは困難です。副首都推進本部会議で「合意の努力義務」が課せられ、知事に「進捗管理」される仕組みなので。市議会が反対しても、知事に「市議会の合意を取り付けろ」と進捗管理されるのです。
そして、夢洲開発やカジノで失敗したら、そのツケは大阪市民が背負うことになります。大阪市民は損をするだけです。
これが、冒頭で「大阪市という自治体の「死」と同じ」とまで書いた理由です。
★ヤバイ点②のまとめ★
大阪府への委託範囲を絞ったかのように報道させていますが、別表4はカツアゲの可能性無限大!
別表5のように、夢洲開発などの決定権を府に握られ、お金出すのは大阪市!!
絶対アカン。
将来にわたり、大阪市の権限をカツアゲする。ヤっバイ条例です。
「条例案」
(委任) 第十条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事及び大阪市長が協議して定める。 附 則 (施行期日) 1 この条例は、令和三年四月一日から施行する。 (事務執行に係る手続及び体制の整備等の検討等) 2 府は、第九条第三項については、この条例の施行後速やかに、円滑な実施のための事務執行に係る手続及び体制の整備その他必要な事項について検討を行い、事務の委託に向けた所定の手続を行うものとする。 |
こんなヤバイ条例を、4月1日にも施行するというのは暴挙です。
委託をする事業(第九条第三項)については、速やかに所定の手続きを行うとあります。
所定の手続きとは、「規約」を作成することです。
「規約が出てから個別に争う」と言っている人もいますが、規約を速やかに作れと定められているのですから、その段階で争うことは難しいでしょう。
否決したはずの「都構想」。
議会で、党利党略で決めてよいはずがありません。
改めて。
市民のみなさん、自分たちのコントロール権を取り戻すために、もう一度、行動しましょう。
行動一覧はこちら(パブコメ、署名、議員要請のやり方)